「薬剤師になれば、人の役に立てる。」
学生の頃はそう思っていました。
国家試験に合格して、白衣を着て働き始めた日。
社会人としての生活が始まることに、不安より期待の方が大きかったのを覚えています。
でも、その期待は少しずつ現実に変わっていきました。
今でもはっきり覚えています。
毎朝、出勤前になると、
「今日は怒られませんように。」
そう思いながら家を出ていました。
辞めたい。
でも新卒だから簡単には辞められない。
親にも申し訳ない。
周りにも言えない。
そんな毎日でした。
この記事では、新卒1年目の私が辞めたいと思った理由と、その経験が今どう役立っているのかをお話しします。
もし今、同じように悩んでいる方がいるなら、
「自分だけじゃなかった。」
そう思ってもらえたら嬉しいです。
辞めたいと思ったのは入社してすぐではなかった
意外に思われるかもしれませんが、私は入社した直後から辞めたいと思っていたわけではありません。
研修中は毎日講義や実習が中心でした。
正直に言うと、
「眠いな。」
と思うことはありました。
でも、
「辞めたい。」
そこまでは思っていませんでした。
店舗へ配属されても同じです。
最初の頃は、どの先輩も
「新人だから。」
という目で見てくれます。
分からないことがあれば教えてもらえる。
失敗しても、
「最初はみんなそうだから。」
と言ってもらえる。
だから、何とか頑張れていました。
空気が変わったのは調剤が始まって3か月くらい
私が一番苦しかった時期は、
調剤業務が始まって3か月ほど経った頃です。
その頃になると、
仕事も増えます。
入力もしなければいけない。
患者さんへの対応もしなければいけない。
電話も鳴る。
薬歴も書かなければいけない。
でも、自分はまだ何もできません。
周りは忙しい。
自分も忙しい。
だからこそ、
質問するタイミングが分からなくなりました。
「今聞いたら迷惑かな。」
「また聞いてるって思われるかな。」
そんなことばかり考えていました。
もちろん、誰かにそう言われたわけではありません。
でも、新人って職場の空気を敏感に感じます。
質問したい。
でも聞けない。
この時間が、一番苦しかったです。
レセコンでの入力ができない自分が情けなかった
学生の頃は、
薬を覚えれば薬剤師として働けると思っていました。
でも現場は違いました。
レセコン。
保険。
コメント入力。
学校ではほとんど習わないことばかりです。
処方箋を見ても、
「これ、どう入力するんだろう。」
そこで止まってしまいます。
患者さんは待っています。
後ろには処方箋が積まれています。
先輩も忙しそうです。
焦れば焦るほど、
何を入力すればいいのか分からなくなりました。
私はそのたびに、
「薬剤師に向いてないのかな。」
と思っていました。
医療事務さんに質問するのが本当に怖かった
仕事で分からないことがあっても、すべてが薬剤師に聞けば解決するわけではありません。
調剤入力や保険のこと、レセコンの操作などは、医療事務さんに教えてもらう場面も多くあります。
でも、私はそれが本当に苦手でした。
私が働いていた店舗は、職場の空気があまり良くありませんでした。
医療事務さん同士もギスギスしていましたし、薬剤師との関係も良いとは言えませんでした。
お互いの愚痴が聞こえてくることもあり、「今日は機嫌が悪そうだな」と感じる日もありました。
そんな空気の中で、
「これ、教えてください。」
と言うのは、とても勇気がいりました。
もちろん、優しく教えてくれる人もいました。
でも、一度でも冷たい反応をされると、それだけで次から聞きづらくなってしまいます。
だから私は、分からないことがあっても一人で何とかしようとしていました。
今思えば、もっと早く聞けばよかったこともたくさんあります。
でも、新人の頃は「迷惑をかけたくない」という気持ちの方が強かったんです。
一人で入力を任された時間が一番つらかった
今でも忘れられない時間があります。
それは、一人で調剤入力を任されたときです。
処方箋はどんどん届きます。
患者さんも待っています。
でも、入力で止まってしまう。
誰かに聞きたい。
でも、みんな忙しそう。
後ろを振り返ることすらためらってしまいました。
「こんなことも分からないの?」
そう思われるのが怖かったんです。
あの時間は、本当に長く感じました。
時計を見るたびに、
「早く終わってほしい。」
「家に帰りたい。」
そればかり考えていました。
新人薬剤師だった私にとって、一番つらかった時間です。
クレームは一つひとつより「積み重ね」がきつかった
患者さんから怒られた経験は、一度や二度ではありません。
もちろん、ほとんどの患者さんは優しい方です。
だからこそ、たまにある理不尽な出来事が強く印象に残ります。
ある日、顔色が少し悪そうに見えた患者さんに、
「体調はいかがですか?」
と声をかけました。
心配だったからです。
すると、
「俺の顔を見て体調悪そうに見えるのか!」
と怒られてしまいました。
また別の日には、
「早くして。」
と急かされたこともあります。
ジェネリック医薬品の説明をしただけで怒られたこともありました。
マイナ保険証の案内をしただけで、長い時間説明を求められたこともあります。
一つひとつだけを見ると、「よくあること」と思われるかもしれません。
でも、それが何日も続くと違います。
仕事へ行く前から、
「今日は何もありませんように。」
そう考えるようになっていました。
新人の頃の私は、患者さんと話すこと自体が少し怖くなっていました。
家に帰ると転職サイトばかり見ていた
仕事が終わると、スマホで転職サイトを開くのが日課になっていました。
応募するわけではありません。
ただ、求人を眺めていました。
「もっと働きやすい職場があるのかな。」
「教育体制が整っている会社もあるのかな。」
そんなことを考えながら、毎晩のように求人を見ていました。
薬剤師以外の仕事も検索しました。
資格の勉強をしようかと考えたこともあります。
それくらい、この頃は「今のままでいいのかな」と悩んでいました。
でも、不思議だったのは、求人を見ているだけで少し安心できたことです。
「今の職場しか選択肢がないわけじゃない。」
そう思えるだけで、翌日も仕事へ行くことができました。
転職を決めた理由は仕事だけではなかった
今振り返ると、転職を決意した理由は仕事だけではありません。
当時、私は遠距離恋愛をしていました。
彼の近くで暮らしたい。
その気持ちがずっとありました。
もちろん、新卒で入った会社を辞めることに迷いはありました。
「せっかく入った会社なのに。」
「最低でも3年は働いた方がいいんじゃないか。」
そんな言葉も何度も頭に浮かびました。
それでも、私の中では仕事が人生のすべてではありませんでした。
仕事も大事。
でも、大切な人との時間も同じくらい大事でした。
だから私は、自分の人生を考えて転職することを選びました。
今でも、この決断を後悔したことはありません。
転職エージェントに言われて印象に残っている言葉
転職活動を始めたとき、一番印象に残っている言葉があります。
担当者から言われたのは、
「求人は3年以上の経験者向け、10年以上の経験者向け、それ以下というように分かれていることが多いですよ。」
という話でした。
私は「3年続けないと転職できない」と思い込んでいたので、とても意外でした。
もちろん、経験年数が長い方が応募できる求人は増えます。
でも、「3年未満だから転職できない」というわけではありません。
もう一つ印象に残っている出来事があります。
私は大手ドラッグストアを希望していました。
すると担当者から、
「人気がある会社なので倍率は高いです。少し難しいかもしれませんが、チャレンジしてみますか?」
と言われました。
そのときは少し悔しかったのを覚えています。
「そんなに難しいんだ。」
「自分では無理なのかな。」
そう思いました。
それでも応募しました。
結果は、内定。
あのとき挑戦していなかったら、今の私はいません。
だから私は、「どうせ無理だ」と決めつけるのはもったいないと思っています。
今だから新人薬剤師に伝えたいこと
新人の頃の私は、毎日「辞めたい」と思っていました。
でも今、管理薬剤師として働いて思うことがあります。
あの頃の経験は、一つも無駄ではありませんでした。
入力で悩んだこと。
患者さんから怒られたこと。
質問できずに苦しんだこと。
全部、今の自分につながっています。
もちろん、無理をして心や体を壊す必要はありません。
本当に合わない職場なら、環境を変えることも大切です。
でも、「今できないから向いていない」とは思わないでください。
新人薬剤師は、できなくて当たり前です。
仕事ができる人も、最初はみんな新人でした。
だから焦らなくて大丈夫です。
私が新人時代から大切にしていた考え方
新人の頃から、一つだけ意識していたことがあります。
それは、
「会社に尽くすためではなく、どこでも通用する薬剤師になる。」
という考え方です。
少し冷たく聞こえるかもしれません。
でも私は、会社に依存するのではなく、自分自身の力をつけたいと思っていました。
だから毎日、
「今日は何を持ち帰れただろう。」
と考えていました。
先輩の薬歴の書き方。
患者さんへの説明の仕方。
調剤の流れ。
クレーム対応。
全部、自分の経験になります。
その経験は、転職しても消えません。
実際に私は、その積み重ねがあったから大手ドラッグストアでも働くことができ、管理薬剤師にもなれました。
だから今、新人薬剤師の方へ伝えたいです。
会社は変わるかもしれません。
職場も変わるかもしれません。
でも、あなたが身につけた知識や経験は、必ずあなた自身の財産になります。
そう思って働くと、毎日が少しだけ違って見えるかもしれません。
ちなみに私は結局、1年目の12月に転職エージェントへ登録しました。薬剤師の転職は何年目からがいいのかという記事に、そのとき実際に言われたことを書いています。
まとめ
新人薬剤師1年目は、本当に苦しい時期でした。
調剤が始まって3か月ほどで辞めたいと思い、人間関係や調剤入力、患者さんからのクレームに悩みました。
家では毎日のように転職サイトを見て、「もっと自分に合う働き方があるのではないか」と考えていました。
その後、転職を経験し、今は管理薬剤師として働いています。
だから今だからこそ言えます。
新人時代の悩みは、決してあなただけのものではありません。
そして、その経験は決して無駄にはなりません。
焦らなくても大丈夫です。
今の経験は、きっと数年後のあなたを支えてくれるはずです。
FAQ
新人薬剤師が辞めたいと思うのは甘えですか?
甘えではありません。環境や人間関係、業務量など、さまざまな理由で悩む方は少なくありません。私自身も1年目で毎日のように辞めたいと思っていました。
新卒1年目で転職するのは早すぎますか?
状況によります。勢いだけで辞めるのではなく、自分にとって何が一番大切なのかを整理してから判断することが大切だと思います。
辞めたいと思いながら働き続けてもいいのでしょうか?
無理をしすぎる必要はありません。ただ、「今の職場しかない」と思い込まず、一度情報収集をしてみるだけでも気持ちが軽くなることがあります。
私も新人の頃は、転職サイトを「今すぐ辞める人が使うもの」だと思っていました。
でも実際には、求人を見たり、キャリアについて相談したりするだけでも利用できました。
転職するかどうかは、そのあと考えれば大丈夫です。
もし今、一人で悩んでいるなら、「どんな働き方があるのか」を知ることから始めてみるのも一つの方法です。
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